(1)背景
今年は、第4回世界女性会議において、「女性の権利は人権である」としてジェンダー平等に向けた取組の指針を示した「北京宣言」及び「行動綱領」の採択から30年の節目に当たります。
この間、国際社会は、ジェンダー平等の実現に向けて様々な取組を行ってきました。2030年までに持続可能でより良い世界を目指す国際目標として2015年に国連が設定した持続可能な開発目標(SDGs)にも、目標5として「ジェンダー平等と女性のエンパワーメント」が掲げられています。
しかし、今年の世界経済フォーラムの報告書によれば、このままの取組のペースでいくと、世界における完全なジェンダー平等の達成にはあと123年かかるとされており、取組を更に加速することが必要です。
第4回世界女性会議30周年に当たり、国連女性機関は、SDGsや2024年の未来サミットで採択された「未来のための約束」等を踏まえ、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントに向けた取組を加速するため、2030年までに優先的に行動すべきテーマとして、①デジタル革命、②貧困からの自由、③暴力ゼロ、④完全かつ平等な意思決定の力、⑤女性・平和・安全保障(WPS)、⑥気候変動の6つの分野を示しています。そして、これら全ての分野に横断的に関与する主体として、若者が推進力となることが強く期待されています。
(2)ジェンダー次世代ネットワーク・プログラム
こうした中、ジェンダー次世代ネットワーク・プログラムは、日本がアジアを中心に世界と共にジェンダー平等(SDGs目標5)を推進し、多様性と包摂性に富み、新たな課題にも対応できる柔軟で強靱な将来社会を実現することを目的として今年度から外務省が実施する事業です。
このジェンダー次世代ネットワーク・プログラムは3つの柱があり、その1つとして今回開催するジェンダー次世代フォーラムは、将来のジェンダー平等推進の担い手となる若者にとって、ジェンダー分野に関する国際的な議論の潮流及び課題に対する理解を深める機会となること、そして、若い世代の研究や議論を促進し、その育成を図り、ネットワークを構築することを目的としています。このフォーラムでは、参加する若者自らが考え、今後の行動へとつなげてもらうことを重視し、インタラクティブな形式も取り入れます。
(3)第1回ジェンダー次世代フォーラム概要
第1回となる今年のジェンダー次世代フォーラムには、バフース国連女性機関(UN Women)事務局長を迎え、オープニングにて基調講演を行っていただきます。バフース事務局長には、ジェンダーを巡る国際的な課題及び潮流について共有いただくとともに、若者へのメッセージを語っていただく予定です。
フォーラムの本体は、3つのセッションで構成されます。セッション1では、女性参画をテーマとしたパネルディスカッションを行います。前述の6つの優先的行動分野のうち、日本は、特に「完全かつ平等な意思決定の力」及び「WPS」にコミットしています。女性の参画は、意思決定において女性の意見を反映させる上で基礎となるものであり、また、WPSの4つの柱の一つでもあります。日本はとりわけ政治及び経済分野での女性の参画が遅れているとされる海外の報告等も踏まえ、このセッションでは各界で活躍する方々に御登壇いただき、御自身の経験を共有いただくとともに、なぜ女性参画が重要か、女性参画推進のために何が必要か、若者が今からできることは何か、について議論いただきます。
続くセッション2では、ジェンダー次世代ネットワーク・プログラムの下で海外の研究機関に派遣された若手研究者による報告が行われます。ここでは主に、派遣を通じて把握できた国際的なジェンダー研究の潮流について、また、海外研究機関とのネットワーク構築の意義について語っていただきます。
最後に、セッション3では、女性参画の推進を妨げる要因の一つとも言えるアンコンシャス・バイアス(性別に基づく無意識な思い込み)について取り上げます。登壇者の方々から、学校や職場などにおける御自身の経験を共有いただき、アンコンシャス・バイアスがもたらす影響、女性の参画推進に向けた改善の必要性、そのために何が必要かについて議論いただきます。
このフォーラムへの参加を通じてジェンダー平等への理解を深めた若い世代が、民間、学術、市民団体、中央・地方機関、国際機関等で活躍し、様々な施策にジェンダーの視点を反映し、もって国内外でのSDGs及び男女共同参画社会の推進への貢献へとつながることが期待されます。